
部屋に入り、すでに腕に巻かれていたそれを、彼がするりとほどく。
貴女はふと、手に感じた解放感に小さな疑問を抱く――
「どうして?」
このまま始まるのかと思っていた、その予想を裏切られたことに、胸の奥がざわついた。
ほどかれたばかりの熱を残す手に視線を落とした、その瞬間――
彼の腕が強く、貴女を抱き締めた。
「がっかりした顔してたよ? 本番はこれから。」
不意の抱擁に、貴女は思わず息を呑む。
背中に食い込むような指先の圧――
痛みと、安心感が奇妙に混ざり合う。
痛い。でも、逃げたくない。
貴女の中心がじんわりと熱を帯びていく。
それは彼の体温? いいえ、期待の熱――
「あ……っ、ん……」
零れ落ちた声に反応するように、彼の抱擁はさらに強くなる。
包み込むというより、奪うように。
片手が背中をなぞりながら上がってくる。
後頭部をやさしく、でも逃さぬように掴むその手に、貴女は抗わない。
彼の瞳と視線が重なる。
もう、目を逸らせない――
そのまま、あたたかな手のひらの感触が全身に染み込んでいく。
背を伝い、くすぐるように。
やがて腰へとたどり着くそのもどかしさが、貴女の呼吸を浅くさせていく。



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