
彼の手が、そっと後頭部を包み込む。
そのまま導かれるように、あなたは壁際へと押しやられた。
ぬくもりが離れた瞬間、ふっと背中が冷える。
けれど、それもつかの間――
振り返ろうとしたあなたの視線は、再び彼の手によって正面に戻される。
「こっちを見ていろ」
低く囁かれた声が、背筋を撫でるように這う。
胸の奥に、ざわめきが灯る。不安と、期待が、入り混じった熱。
やがて彼の手が、静かに上着へと伸びた。
一枚、また一枚と、丁寧に剥がされていく布地。
残されたのは、下着だけの姿――
「見られる覚悟は、していたはずなのに…」
けれど、視線を浴びるほどに羞恥が募る。
そのくせ、どこか悦びにも似た感情が滲んでいた。
「綺麗だよ…」
ささやきと同時に、彼があなたの両腕を背中で組ませる。
そして――柔らかな布が、するりと肌を撫でる感触。
ちらりと目に入った、深紅の帯。
それは、obi。
艶やかな布が、あなたの身体を静かに縛りあげていく。
背後からまわり込むように、胸元をやさしく束ね、
腰へ、肩へと絡みつきながら――
最後に胸元へ、リボンのような結び目が添えられる。
「…わたし、いま、こんな姿…」
言葉にできない想いが喉に詰まる。
布の締めつけはごくわずか。けれど、逃れられない感覚は確かにある。
自分の意思で差し出したわけではない。
なのに――今のあなたは、まるで彼に差し出された贈り物のようだった。
「なんでもしていいよ、って言ってるみたいに…」
彼が向けてくる、愉しげな、それでいてどこか支配するような笑み。
あなたはただ、それを受け止めるしかなかった。
逃げ出すことも、拒むことも、もう――できなかった。

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