事務所のソファに深く沈み込み、
僕は自分の指先を眺めていた。

オイルの香りは染み付いている。
手技も、教わった通りにこなしているはずだ。
なのに、僕の予約表は白いまま。
「せーじ、整形でもするか?」
オーナーの低い声が、静かな室内に響く。
顔を上げると、
パソコンを見つめながら他の
セラピストの予約表を調整している。
その隅のウィンドウには海外映画の
俳優さんの様な画像が開かれていて、
彼に指を指している。
「明らかに海外の俳優さんじゃないですか」
「そう、SMを題材にした映画の俳優さん」
「…マジですか?」
「マジだぞ」
「せ、整形はちょっと…」
オーナーはちょっとがっかりしたように
パソコンのモニターに戻る。
確かに、僕は焦っている。
同時期に入ってきた、
爽やかな笑顔を浮かべる「大学生風」の青年。
僕よりも若い彼は、月に100万を超える数字を叩き出す。
「僕と同じ時期に入ったのに、もう100万のノルマ達成。彼凄いですね」
「お前だって出来るはずだけどな」
オーナーの応えは、あまりに唐突だった。
「僕は無理ですよ」
「そうだな今のままだと無理だな、あいつとの違いを考えてみな」
違い?
彼は若い、さわやかでかわいい「大学生風」の青年。
世の中は“かわいい”を求めている?
ならば童顔であっても僕の様な性感が特技の人は難しい。
でも僕なら出来る?
答えが出ないまま悩み続ける。
その夜、オーナーに勧められるまま、
僕は一本の恋愛ドラマを見た。
画面の中で、
年下の大学生が恋人をエスコートし、
不器用ながらも真っ直ぐな言葉を囁く。
(僕もこういう事やっているはずだけど…)
その瞬間、昼間にオーナーが言っていたことを思い出し、
視界が開けるような感覚がやってくる。
彼女たちがわざわざ高い金を払ってここに来る理由。
それは、凝った肩をほぐすためでも、
ただ性欲を満たすためでもない。
「日常」という檻を抜け出して、
「誰かの特別な女」という役を演じるためだったんだ。
僕は翌日、服屋に向かう。
UNIQLOでもGUでもいいと言っていた。
少しオーバーサイズなシャツ。
清潔感のある、どこにでもいそうな、
でも「憧れの対象」になり得る大学生の戦闘服。
鏡の中に映る自分は、
もう、売れないセラピストの「せーじ」ではなかった。
誰かの「理想の恋人」という仮面を被った、見知らぬ男だ。

そしてホームページの写真を変えてもらい、
SNSの投稿写真もいろんなシチュエーションを
増やしていった。
(これで変わるのだろうか?)
いきなりの行動。
正しいかわからない毎日。
不安を抱きながらも描く日記。
だがそのドキドキも数日だけの事だった
「せーじ、○○時に○○ホテルに行ってこい」
僕は目を見開いてオーナーを見た。
「固まってないでさっさと準備していきな」
僕はいそいそと荷物をまとめる。
「せーじ」
「はい!」
「ちょっとはマシだ、気合入れてこい」
「…はい!」
僕は重く感じていた事務所の扉を開けて外に出る。
お客様の彼女とは良い時間を過ごせたと思う。
お客様と目が合った瞬間、空気の密度が変わるのがわかった。

「……えっ…ちょっと目を合わせるの恥ずかしい」
彼女の吐息が熱を帯びる。
僕の手が肌に触れる前から、
彼女の心はもう、
僕が用意した「シチュエーション」の中に溶け出していた。
心が解ければ、体は驚くほど正直になる。
僕の指先がわずかに動くたびに、
彼女は子供のように声を上げ、震えた。
技術が向上したのではない。
彼女が僕という「物語」を信じてくれたから、
僕の魔法が効くようになったのだ。
鏡の中の僕が変わったことで、
僕の指先には魔法が宿りました。
でも、それは決して「才能」ではありません。
女性が「安心」から「刺激」へと滑らかに移行するための、
極めて論理的な**「物理と心理の法則」**があるのです。
激しい動きも、特別な指の形もいらない。
相手の呼吸を読み、圧を変え、面積を調整する。
セラピストとして現場で磨き続けた、
女性を心から開放するための「入り口」の作り方を、
誰にでも再現できる形にして公開しました。
▼ 快感の再現性を手に入れる

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